石鹸が平均寿命を伸ばした?
石鹸が工業として盛んになったのは、12世紀ごろのこと。
地中海沿岸のオリーブ油と海藻灰を原料として、フランスのマルセイユ、イタリアのサボナ、ベネチアで製造が行なわれました。
18世紀に入ると石鹸の需要が増えてきて、海藻や木から灰を作るだけでは追いつかなくなってきました。
石鹸の製造にはアルカリ剤が絶対に必要なのですが、灰からアルカリ剤を作るのでは、需要に追いつかなくなったんですね。
そこでフランス政府は懸賞金をかけてアルカリ剤製造の方法を募集しました。
すると、1791年にフランス人科学者ルブランがアルカリ剤の合成に成功します。
ルブラン法と言われるこの方法は、海水から採った食塩から硫酸ソーダを作り、それに石灰石と石炭を混ぜて加熱して炭酸ソーダを取り出すというものです。
この製造法が確立したことで、石鹸を大規模に生産することができるようになりました。
1861年にはアンモニアソーダ法(ソルベー法)が発明されました。
これは食塩水にアンモニアガスと炭酸ガスを吹きこんで重炭酸ソーダ(重曹)を作る方法です。
ルブラン法よりもソルベー法のほうが低コストで品質の高いソーダを大量に作れるので、世界中に広まりました。
その後1890年には、ドイツで電解ソーダ法が発明されます。食塩水を電気分解してソーダを作る方法で、今の主流です。
このようにしてソーダが安く大量に作られるようになると、石鹸の製造コストも下がって安くなり、庶民も石鹸を変えるようになりました。
それによって、日常生活の衛生状態が大幅に改善され、伝染病や皮膚病の発生が激減したのです。
医学の進歩ともあいまって人々の平均寿命は大きく伸びました。