界面活性剤とは混じり合わないもの、例えば水と油の間の界面に働いて界面の性質を変え、水と油を混じり合わせるようにする働きがあります。
油汚れのついた衣類を水だけで洗っても汚れは落ちませんが、洗剤を入れることで、ある程度キレイになりますよね?
洗剤にはほとんどの場合、合成界面活性剤が含まれているからです。
ところが、アルカリ剤には界面活性剤が含まれていないのに、油汚れが落ちるんですね。
これはなぜでしょうか?
油脂の成分である脂肪酸はアルカリで乳化されて溶けるという性質があります。
アルカリ剤が脂肪酸と結合して石鹸と同じ性質に変えてしまうためです。
石鹸になった汚れは水と馴染みやすくなり、はがれやすくなるんですね。
また、アルカリはタンパク質を溶かす働きもあるので、脂肪酸やタンパク質、油脂が混ざり合った皮脂や垢の汚れを洗い流すのにも効果的。
台所のベタベタする気分の悪い汚れも、油脂と脂肪酸が混じりあったものがほとんど。
だからアルカリ剤で落とすことができるのです。
関連記事
せっけんの種類もいろいろあって、無添加は安心というイメージがあるかもしれませんね。
確かに洗顔せっけんなら無添加のほうが肌にはやさしいのですが、洗濯石鹸となると話は変わります。
洗濯石鹸にはアルカリ剤が助剤として配合されていることが多いです。
洗濯石鹸の原材料に炭酸塩と記載されていたら、それはほとんどの場合、炭酸ソーダのことで、アルカリ剤です。
無添加の石鹸の場合はアルカリの力がないので、洗濯液は酸性に傾きやすくなり、石鹸カスができやすくなります。
毎日の洗濯にはアルカリ助剤配合の石鹸がおすすめです。
ただし、シルクやウールなどアルカリに弱い線維を家庭で手洗いするときは無添加せっけんが適しています。
石鹸やアルカリの性質を把握した上で、洗濯するものの素材に合わせて上手に使い分けたいですね。
関連記事
石鹸の製造を飛躍的に発展させたアルカリ剤の発明ですが、アルカリ剤ってどんな特性があるのでしょうか?
アルカリ剤の特性①
油汚れを落とす力が強い
アルカリは油脂の成分である脂肪酸と反応して石鹸のようなものを作ります。
そうなるともはや油汚れではありませんね。
石鹸になっていますから、今度はほかの汚れも落としてくれます。
アルカリ剤は汚れを石鹸に変える!という働きがあります。
アルカリ剤の特性②
タンパク質汚れを落とす
タンパク質汚れとは血液とか食べこぼしですね。
タンパク質はアミノ酸が結合してできていますが、アルカリはアミノ酸の結合を分解したり、結合を緩めます。
そうなるとタンパク質汚れははがれやすくなるんですね。
アルカリ剤の特性③
アルミには使ってはいけない
アルミの鍋などをアルカリにさらすと白く粉をふいたようになります。
これはアルミニウムとアルカリが反応して水酸化アルミニウムができて、アルミニウムが腐食したからです。
アルカリとアルミはNGです。
以上、アルカリの特性でした。
関連記事
石鹸が工業として盛んになったのは、12世紀ごろのこと。
地中海沿岸のオリーブ油と海藻灰を原料として、フランスのマルセイユ、イタリアのサボナ、ベネチアで製造が行なわれました。
18世紀に入ると石鹸の需要が増えてきて、海藻や木から灰を作るだけでは追いつかなくなってきました。
石鹸の製造にはアルカリ剤が絶対に必要なのですが、灰からアルカリ剤を作るのでは、需要に追いつかなくなったんですね。
そこでフランス政府は懸賞金をかけてアルカリ剤製造の方法を募集しました。
すると、1791年にフランス人科学者ルブランがアルカリ剤の合成に成功します。
ルブラン法と言われるこの方法は、海水から採った食塩から硫酸ソーダを作り、それに石灰石と石炭を混ぜて加熱して炭酸ソーダを取り出すというものです。
この製造法が確立したことで、石鹸を大規模に生産することができるようになりました。
1861年にはアンモニアソーダ法(ソルベー法)が発明されました。
これは食塩水にアンモニアガスと炭酸ガスを吹きこんで重炭酸ソーダ(重曹)を作る方法です。
ルブラン法よりもソルベー法のほうが低コストで品質の高いソーダを大量に作れるので、世界中に広まりました。
その後1890年には、ドイツで電解ソーダ法が発明されます。食塩水を電気分解してソーダを作る方法で、今の主流です。
このようにしてソーダが安く大量に作られるようになると、石鹸の製造コストも下がって安くなり、庶民も石鹸を変えるようになりました。
それによって、日常生活の衛生状態が大幅に改善され、伝染病や皮膚病の発生が激減したのです。
医学の進歩ともあいまって人々の平均寿命は大きく伸びました。
関連記事
石鹸の起源は古代ローマ時代にさかのぼります。
サポー(Sapo)という丘の神殿で羊を焼いて神に供える風習がありました。
この羊を火であぶっているとき、したたり落ちた脂肪が木の灰に混ざって石鹸のようなものができたのがはじまりと言われています。
本格的な石鹸製造が始まったのは8世紀のスペインやイタリアでした。
家内工業として定着し、専門の石鹸職人もいました。
ただ、このころの石鹸は動物性脂肪と木灰から作った「軟石鹸」と呼ばれる軟らかい石鹸だったようです。
動物性脂肪ですから、かなり臭かったのではないかと思います。
12世紀ごろになると、動物性脂肪ではなく、植物性脂肪(地中海沿岸のオリーブ油)と海藻灰を原料とした硬い石鹸(硬石鹸)が工業的に作られるようになりました。
この石鹸は硬くて使いやすく、嫌な臭いもなかったので、瞬く間にヨーロッパで人気になりました。
石鹸製造が盛んだったのはイタリアのサボナが「サボン」(フランス語で石鹸)の語源です。
17世紀には、マルセイユが石鹸工業の中心地として栄えました。
日本で昔から使われている「マルセル石鹸」は、マルセイユ石鹸に由来するといわれています。
関連記事